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今日は静かである。そう、誰もいないようなそんな錯覚をおこしそうなくらい。けれど、沢山の人は歩き回っていて、時折私を見る町の男性からの媚らしきものがちらつき不快感を与えてくる。その不快感でさらに冷めたような目をしてしまっていた。
 
『彼女、大丈夫?』
 
きっとこの人は勘違いをしているようだ、また。
 
『私は男です』
 
外見が女の子らしく女性と間違えられるが正真正銘の男性である。背の高さが女性でも男性でもとれる微妙な高さなため、こういう誤解がちらほらあるが、それだけではない…。
 
『薔薇軍中尉、櫻です』
 
見た目が真っ赤な軍人に薔薇軍の主張とも言える薔薇のコサージュを頭に付けているためぱっと見は女だと感じがいをするかもしれないのである。この街には沢山の種類の軍人がいて、薔薇軍はその中の一つである。中尉であると言えば大抵の輩は逃げていくが、本当に男性なのか信じられないっと言ったら輩は顔を近づけてきたり、肩を触られそうになるが蹴り飛ばす。
 
『死にたいのか?』
 
っと一言。自分の容姿は嫌いではないが毎度毎度からかわれると蹴り飛ばしてやりたくなる。それに比べ街娘達から薔薇の花やお菓子といったものを貰う時は嬉しい、キラキラした瞳は嫌な気はしないから。
 
『櫻』
『銀』
 
少し機嫌が悪そうな相棒を発見して、やっと今日の静けさが消え賑やかな景色になった気がする私は最近かわったのかもしれない。



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久々に戦が始て、随分長い時間剣を振るっている気がした。戦は領土確保及び領土拡大のためにやっていて、街には一切手をかけないというのがこの世界のルール。見たことのない領地を見つけては奪い合う、それが主の仕事である。

普段はそんなに危険な状態にはならないが、大抵の薔薇軍は脅威的な技能をもつ雪柳軍に傷つくものが多数いた。薔薇軍は弱い軍ではないが、雪柳軍には歯が立たないのは雪柳軍が薔薇軍を見た時の鋭さである。薔薇軍は優しい者が多いためか技能が互角であろうと油断してしまう。雪柳軍が攻めて来たがある青髮の声で、急に戦をやめ帰って行った。この戦ではどちらもこの領地は手に入らないということで終わったのである。

だが、青髮の青年はどうして撤収を命じたのか。


『…櫻』

ふとパートナーである櫻が気になった。櫻は俺が唯一認める技能の持ち主である。いつもは近くにいたり、このような状態になったら私の近くに来て連絡をするはずなのだが見渡せば櫻が居なかったのである。

『櫻…櫻はどこにいる』

嫌な予感が過った。理解した瞬間声をはりあげてしまう、それに気づいた部下は必死に櫻を探すが見当たらない。大変な事態である。その時青髮の青年が撤収の命令を出した時の方角を思い出した…。

『…あそこにいる』

私の勘は当たる、距離は遠く大きな岩がある周辺を見渡した時言葉を失った。息の荒い危険な状態である櫻を発見したからである。急いで黒い赤で染まった上着を脱がすと、何故か治療が施されていた。危険な状態であるのには変わらないのだけれども。

『…し、ろが』
『今は喋らなくていい』
『…わ、たし』
『直ぐに救急隊に運ぶ喋るな』

櫻を持ち上げ救急隊に運ぶことにしたが、何かが抜けてしまったかのような櫻の空っぽな状態が腕から伝わり救急隊に渡すまで一言も櫻は喋らなかった。




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まさかの再会だった。ありえない、ありえない事態なのだから、と言い聞かせては手にこびりついた赤を睨んだ。昔のトラウマのフラッシュバックがちらつかせる…どうして、櫻が生きているんだ…。赤は嫌いである、何もかも奪うかのような炎の色であるから。昔大事な友人を失った私自信も危険な状態でとても生きて歩ける状態ではなかった。雪柳軍の総司令官に助けられた私は恩返しをすべく中尉にまでなった。

だがいつかもしかしたら櫻は生きているのではないだろうか、私が今生きているかのように彼も生きていて、戦のない平和な街の住人になって幸せに暮らしているかもしれない、と考えるようになった。会いたい、会って抱きしめたい…叶わない夢であった、

けれどどうしてこんなにも悲劇ばかりが私を苦しめるのだろうか。私の大嫌いな色を身につけた櫻と、戦場で一体一出会うことになるとは、初めはわからなかった、あれから数十年後だ、背丈や雰囲気もかわるはずである、だが違った…剣がぶつかり合った瞬間にお互いに電流が流れた…あぁ、櫻だ。櫻がいる

『…あ、碧』

黄緑と青のオッドアイにやわらかな桜色の髪、少し薄い赤色の唇…。何も聞き間違わないのは、懐かしき櫻の声。

『…』
『ど、どうして、…どうして!』

櫻の剣に力が入るのが剣越しで伝わってきた、それはこっちの台詞だった。怒りで満ちていく、大嫌いな赤と櫻があの頃の私を思い出させるようで…!

『生きてたんだ』

ただ冷たい台詞。櫻は十分に動揺する材料だった、剣から力が入らなくなりその隙に切る。真っ赤だった…綺麗な赤だった。大嫌いな色のはずなのに、綺麗に見えたのは櫻だからなのだろうか。

『…櫻』

ありえない、綺麗だなんて信じられないとおもっては切った。殺しはしない紛れもない大事な友人、櫻であるから。苦しがる櫻をみて自分が自分でないかのように感じ、ふと何を私は何をやっていたのだろうか。気づいた時には遅く、櫻は危険な状態であった、…応急処置をしなければと無意識に布を縛り付け圧迫するといったことを今更になってし始めた、このままでは居なくなってしまうっと怖くなったから。

『…櫻、また会おう』

櫻の動揺が見て取るようよにかわる、動揺していて、何も動けない櫻は櫻の弱点である。自分のことになるととことん不器用になる櫻は今も分からなくて嬉しかった。

さっきの時間を思い出した時に、その時についた櫻の赤が手についたのをみて愛おしい気持ちに変わった…また会いたい、と。




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